大空襲

母は20歳であった。東京湾対岸の五井に疎開していて、
真夜中の東京が真昼のような明るさになって燃え盛る有様を
私が子供のころ克明に語ってくれた覚えがある。向島
寺の和尚は当時10歳で、母親に手を引かれ逃げまどい、
二人とも無事だったが、空襲が終わって3日後にやっと
生きている実感が湧いたそうだ。非戦闘員を一晩で
これ程殺した例はない。和尚は今でもアメリカが大嫌いである。